Komiya Yasuyu official site

Column

やすゆうくんの音楽ルーツ

vol.9 今夜はLaura Nyro で我が魂のクリスマス...(2015.12.25)

皆さん、どんなクリスマスをお過ごしでしょうか。
今夜は毎年この時期クリスマスソングが流れはじめると僕はこのアルバムを必ず引っ張り出して聴くのです。Laura Nyro Chrismas and Beads of Sweat 1970の ラスト曲 Chrismas in my soul.
彼女は1947年ブロンクス生まれ生粋のニューヨーカー。
ピチカートファイブの小西氏がかつて作曲は彼女から教わったと書いていましたが日本人のライターにもかなり彼女から学んだ人達がいます。いちばん分かり易い例は吉田美奈子の冬の扉ですね。山下君やター坊ややすゆう君もかなり影響を受けています。当時このアルバムに挿入されたBlack Patchはみんなのお気に入りの一曲でした。ローラのコード進行とテンションコードをみんな真似たものです。メジャーセブンスなんて誰も知らない頃の話しです。
FM7からEm, Dm7 G7でリズムのリフがばっちり決まって、今じゃだれもがやってるんですが当時はとっても斬新でした。テンションコードはローラとジムウェブの二人くらい(プロのバカラック先生とか以外でね)ローラの作品はブロードウェイのミュージカルの様なドラマティックさと黒人音楽の影響を受け特にコーラスの美しさと繊細さ、ひとつの曲に静と動、聖と俗それらを研ぎ澄まされたダイナミズムの中に放り込みます。それはとても東海岸の特徴であって西海岸には見られないものでした。彼女は活動家でもあり政治的ポリシーも曲にして放ちます。このChrismas in my soulにはBlack Panther やChicago Sevenへのシンパシーを表明しています。この時代1965年から1970年のポップスロック音楽の発展のバックグラウンドを考える時、公民権運動とベトナム戦争を語る事なしに理解できないのです。
 
このアルバムが発売された2年程前にはなしを戻しましょう。1968年にベトナム戦争において最大の事件が報道されました。ソンミ村虐殺事件。僅か人口507人の農民だけの村で504人が無抵抗の状態で虐殺された事件が報道されます。一気に反戦の抗議活動が起こりおりしもリンドンジョンソン大統領が任期満了のための大統領選と重なります。8月民主党大会がシカゴで行われ反戦活動家達もデモを組織し抗議しました。共和党からの候補者はニクソンでした。民主党候補者には反戦と草の根運動のマッカーシー候補で次第に厭戦ムードの世論に支えられ頭角を現します。
ロバートケネディ候補もベトナム撤退論を展開し支持を伸ばしますがこの年12月に暗殺。結局大統領選は法の秩序回復をスローガンに南部の保守派に支持されニクソンが当選。 なんかトランプさんが支持を得る馬鹿なアメリカはずっと続いているんですね。その民主党シカゴ大会は警察の介入によりデモが激化し8人が逮捕されシカゴエイトと最初呼ばれましたがブラックパンサーの一人が別件扱いとなりシカゴセブンと呼ばれ騒乱共謀罪で裁判が続きます。アメリカの若者達が苦悩していた時代です。そう言う時代背景に発表さたクリスマスソングですが何故だか現在の日本の状況に似ていませんか。原発再稼働、平和憲法の改悪化、司法が立法に媚びを売る最悪の状況をどうか変えていけるよう来年みんなで選挙に行きましょう。
という事で今夜はLaura Nyro で我が魂のクリスマスです。